No.387『ツィゴイネルワイゼン』大橋美加8月2日読了時間: 1分1980年 日本映画鈴木清順監督『ツィゴイネルワイゼン』ターンテーブルのクロース・アップ。サラサーテのレコードに紛れこんだ言葉を聞き取ろうとする二人の男。海辺に打ち上げられた女の股から出てくる朱赤の蟹。替え歌の春歌をうたう三人の盲の門付け。夢幻の鈴木清順ワールドに引きずり込まれる。ブルースと拍子木の間を鳶コートで浮遊する原田芳雄。男の眼球も水蜜桃も舐めつくす大楠道代。苦虫を噛み潰し幽玄に弄ばれる藤田敏八。桃色の乳首を晒しフィンガースナップを切る大谷直子。切り通しを魔界との端境の如く存在させ、観客の思考を停滞させる。この映画自体が幻なのかと疑わしくなる、唯一無二の怪作である。
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