No.386『追憶』大橋美加1 日前読了時間: 1分1973年 アメリカ映画シドニー・ポラック監督『追憶』(The Way We Were)真っ赤なマニキュアの長い爪が、男のブロンドに触れる。眼を閉じてバー・カウンターに座る男の金色の前髪をいとおしげに撫でる女の指。忘れられない再会シーンである。女は政治活動に夢中の貧しいユダヤ娘ケイティ。男はブルジョワ出身の文武両道ハンサム・ガイ、ハベル。バーブラ・ストライサンドとロバート・レッドフォード、どちらもはまり役。新宿の名画座で観て以来、好きな男の髪に触れる癖がついた。バーブラの熱演のせいであろうか。惚れ抜きながらも過激な政治活動を捨てられない女。憤りだけではない潤いある生活を望む男。ひとこと多い”怒れる女”ケイティが、マルクス・ブラザーズのハーポに扮する仮装パーティのシーンがイイ。バーブラのハーポはキュートで、ミュートのハーポに扮してまで一過言ある彼女の口を笑いながらふさぐレッドフォードも実にチャーミング。カット割りの多い、めまぐるしいつくりに、’70年代の映画だなあと、懐かしさがこみ上げる。主題歌は20代のころによく歌ったが、”Scattered pictures…”という歌詞にぴったりの演出と、あらためて想う。
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