No.389『椿三十郎』大橋美加8月14日読了時間: 1分1962年 日本映画黒澤明監督『椿三十郎』観なおしてみると、見事にミニマルなコンセプト作品と思えてくる。お堂、座敷、作り物の椿。置き物みたいな奥方と令嬢。三船敏郎演じる三十郎は野獣さながら、このミニマル・ワールドを吠えまわる。あたかも時間が勿体ないと言わんばかりに、すかさず謎解きをしていく三十郎。正義感はあれど未熟きわまりない九人の若侍とともに、観客も考える余地を与えられないつくりが面白い。悠長な奥方の台詞「本当に良い刀は鞘に収まっているもの」が本作のキイワードであるなら、三十郎のキャラクターや、ラストの一騎討ちはパラドックスとも思えてくる。『用心棒』(’61)の続編を乞われた黒澤監督の、創意工夫が功を奏した逸品か。台詞のみで示される、“押入れ侍“小林桂樹と“やんごとなき奥方“入江たか子のやりとり、見せて欲しかったなあ…
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