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No.378『近松物語』

1954年 日本映画

溝口健二監督『近松物語』


香川京子さんを間近でお見かけしたことがある。


コロナ以前“女性映画人の集い“なる会合に定期的に招かれていた時代、

パーティ会場にてである。

スクリーンの印象と比べ、地味で控え目にお見受けした。


少なくとも、

「黒澤や溝口作品常連で世界的な評価を受けている女優」

という言葉の響きとはかけ離れたイメージであった。





本作で香川が演じたヒロイン・おさんは、

恋も知らないまま父親より年かさの男に嫁ぎ、

その主人にさえ裏切られている若き人妻。


道行きと相成る手代に長谷川一夫。

おさんの足に接吻し続ける場面は濃厚である。


おさんの夫に扮する進藤英太郎のいぎたないばかりの上手さ。

この助平爺に狙われる女中に扮する南田洋子の野菊の如き風情。


光と影、奥行き、長回し。

そして、畳みかける拍子木。

溝口ワールドにどっぷりと浸かる。


たった一日でこんなことに。明日はわからへんなあ…

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