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No.288『静かなる決闘』

1949年 日本映画 黒澤明監督


禁欲的な物語に必要なのは、

逆にすこぶる野性的なキャラクターかも知れない。

ライオンの如く雄々しき29歳の三船敏郎が、

自身の欲望と闘う医師を演じる。

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三船扮する医師は、野戦病院で手術中に、患者の梅毒を移されてしまう。

自らの欲望を封じ込め、職務に励みながら治療を続ける彼のまえに、

病気を移した嘗ての患者が現われる!


全てを贖うように降りしきる雨で始まる、苦悩の物語。

黒澤のカメラワークは、黒白画面を活きいきと躍動させる。

70年以上前の公開時、どれほど斬新であったことか。

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ダンサー崩れの見習い看護婦に扮した千石規子の存在感。

のらりくらりと捨て身の告白をするところなど、いじらしい。


雨に流すことの出来ない汗と涙と病。

「僕の欲望は時々わめく。なのに道徳がのさばっているんだ!」

主人公の台詞が心に鳴り続ける。


三船が医師に扮した黒澤作品では、

後の『赤ひげ』(’65)が有名。

”ア”の項で取りあげているので参照あれ。

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