No.391『天国と地獄』大橋美加10月18日読了時間: 1分1963年 日本映画黒澤明監督『天国と地獄』黒白画面にピンク色の煙がたなびいた瞬間、観客たちの拍手喝采が響いた!映画館に活気があった時代、新宿の大きなスクリーンで観た想い出。古い劇場パンフレットを取り出すと、昭和52年とある。美加は10代だったのか。おお、立派なパンフが¥200とある。想い出は尽きない。それまで名画座で洋画ばかり観ていた少女が、日本映画の素晴らしさに目覚めた一作だった。初公開から14年、なぜ大きな映画館で再映されたのかは思い出せない。金持ちを狙った小児誘拐が、さらに卑劣な方向に転がってゆく。一幕物を想わせる前半から、『こだま号』内のシーン、微塵のテンションも落とさず、犯人逮捕劇へとなだれ込む、あっと言う間の二時間半!こんな映画、二度と造れるはずがない!初めて観たときは、山崎努扮する犯人を心底蔑んだが、年月を経て観なおすと、罪を憎むあまり犯人への憎しみを増幅させていく、仲代達矢率いる刑事たちの執念もまた、恐ろしい。観客を徹底的に動揺させたままズドンと断ち切るラストも圧巻の、永遠の名作である。
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