2004年 ベルギー・フランス・イギリス合作映画
ルシール・アザリロヴィック監督
(Innocence)
少女の笑い声にビクッとすることがある。 純粋で残酷で、無防備な笑い。 自分も嘗ては少女であったはずなのに、 怖れを仕舞い込んだ無防備さがこわい。
ルシール・アザリロヴィック監督が、 フランク・ヴェデキントの原作をもとにして作り上げた本作は、 ”ダーク・ファンタジー”と呼び捨てることを憚る、 とびきりの”こわい寓話”である。
暗い森の中にぼんやり照らされた電灯の下を、 三つ編みに白いプリーツスカートの少女が並んで遠ざかってゆく。 こわい。 赤いリボンを髪に結んだ少女がボートを漕ぎだすと、 雨が降り始め、池の水かさが増してゆく。 こわい。
鬼才・ギャスパー・ノエのパートナーとしても知られる ルシールだが、本作の”恐怖の美学”を映画ファンの脳裏に植えつけた後、 次回作『エヴォリューション』(2015)まで、長い道程を経ることとなった。
誰が観てもわかる映画なんて、もう要らん!
観客の想像力を刺激してくれる映画にのみ、
資金を提供する出資者がもっともっといるべきだよなあ・・・
ルシール・アザリロヴィックの感性を、ぜひ応援して欲しい!
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