1953年 日本映画 溝口健二監督
西洋のホラー映画より断然、 日本の幽霊映画のほうがこわい。 今は亡き伯父(母の義兄)から、 霊魂や魑魅魍魎の話を幼いころに訊いていたからかもしれない。 京大と同文書院を出たインテリであった伯父は、 倉敷のお寺に婿入りし、大僧正となった人。 葬儀とは無縁であり、弟子たちを持ち、悪霊を祓うなどの人助けをしていた。 89歳で亡くなるまで皺ひとつない童顔で、何処か浮世離れした伯父であった。
『雨月物語』のストーリーは確か、 祖母(母の母)から聞いたように記憶している。 貧しい農民の男が、美しい高貴な女人の屋敷へ招かれ、 日々を過ごすが、女人は幽霊であったという話。 祖母は原作を読んだのか、それとも本作を観ていたのか、 今では知る術もない。 18歳で祖父の後添いとなり、先述の伯父を育ててから、我が母を産んだ祖母。
今回久々に観かえし、セット撮影でありながら、臨場感あふれるカメラワークに改めて感服。 京マチ子の妖しさ、纏う着物の金糸の輝き、果たしてどのように撮ったのか。 カラーで観たら、いったいどんな色なのだろうと、想像力を煽る。 両極を成す田中絹代の純朴な佇まいも忘れ難い。 ラスト・シーンでは観客も主人公とともに我に返り、落涙。
京マチ子は溝口健二、黒澤明、小津安二郎、成瀬巳喜男、市川崑などなど、
巨匠たちの作品で艶姿を披露、
”寅さん”のマドンナまで演じ、昨年95歳で亡くなった。
観かえしたい作品、あり過ぎ!
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