1945年 アメリカ映画 ビリー・ワイルダー監督
(The Lost Weekend)
ビリー・ワイルダーはご贔屓の映画作家。 ストーリーテリングではハリウッド史上、未だ右に出る者はないと信じる。 空をビルが埋めてゆくニューヨークの景色、一軒のビルにカメラが近づくと、 おや?窓から何か、ぶらさがっている! テルミンが不気味に響き、アルコール中毒である主人公の、 週末の物語が始まる。
レイ・ミランド扮する主人公は、売れない作家であり、 苛立ちから酒びたりの日々。 兄が養い、キャリア・ウーマンの恋人もいる贅沢者。 主人公は見捨てられないまま、まわりの期待を裏切り続ける。 甘ったれぶりが似合うレイ・ミランド。 主人公の心の葛藤とあやふやな記憶、そしてフラッシュ・バックと繋げる脚本が見事。 小道具の工夫、鏡や影の演出もさすがワイルダー!
のっぺりとした二枚目のミランドは、本作でオスカーを獲得した。 今は亡き淀川長治先生が、 「彼はそれまで、大根役者と言われていたのね、 でも酔っぱらいを演じてアカデミー賞をとったのね」 と語っていらっしゃったっけ・・・以降、 男優がオスカー・ノミニーとなり易い役柄は、 暫くの間”アルコール中毒患者”であったそう。
お酒だいすきな美加ゆえ、 アルコール中毒患者が主人公の映画はとても興味深い。 だって、飲むお酒がちがいすぎる。 ハリウッド映画のアル中たちは、「まず、ビールで乾杯」なんてしない。 そして、飲んでいてたのしそうではない!
”大根役者”とは絶対に言われなかったであろう
名優ジャック・レモンも『酒とバラの日々』でアルコールに溺れていく主人公を演じた。
鬼気迫る名演であったが、本作ではオスカーを獲れなかった。
上手く演じすぎたのかもね・・・
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