1984年 イギリス映画 マイケル・ラドフォード監督
(1984/Nineteen Eighty Four)
ユートピア(utopia)の反義語はディストピア(dystopia)、 ”理想郷”に反し”暗黒郷””地獄郷”と訳すらしい。 日本語にされるとぞっとするが、 ディストピアが舞台とされるSF映画は数多ある。 むしろ、ユートピアが舞台となる映画なんて、作られる意味がない。
ジョージ・オーウェルの原作をマイケル・ラドフォードが映画化した本作、 ファースト・シーンから、嫌気満載。 カラー作品であるのに色彩が無く、人間が人間らしい感情を持てない世界を強調する。 そして、登場するのは主人公に扮するジョン・ハート。 シワの目立つ痩せた細面に東洋人のような腫れ瞼。 楽しそうな顔が想像できない、クセのある役どころで真価を発揮した俳優。 『エイリアン』での衝撃的な役を、 メル・ブルックス『スペース・ボール』でセルフ・パロディしちゃう茶目っ気もあるから、 イメージよりは楽しいひとだったのかなあ・・・
貧困と無知を植えつけ、洗脳する。歴史を改竄し、懐柔する。
昔、SFとして観た本作が、この時世に観かえすと
身近な脅威として迫ってくる気がする。
真実を知り、自己を持ち続けなければ未来は開けない。
リチャード・バートンの遺作ともなった本作、
職人ラドフォードは職人であるからこそ、この原作に挑んだのかも。
ちなみに彼はジャズ・ピアニスト、
ミシェル・ペトルチアーニのドキュメンタリー
『情熱のピアニズム』も手がけている。
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