1975年 イタリア・フランス合作映画
ルキノ・ヴィスコンティ監督
(L’innocente)
フェリーニを知って映画にのめり込み、 次にハマったのがヴィスコンティ。 本作は確か、靖国通りの『テアトル新宿』で 『家族の肖像』(’74)と二本立てで観たはず。
”真紅”があふれているイメージ、よく覚えている。 豪華絢爛な衣裳、カーテン、壁紙。
小物ひとつでも「本物」でないと受けつけず、 予算オーヴァー当たり前のプロデューサー泣かせであった、 貴族出身の映画作家。 10代で彼の世界を知ることが出来たのは、 我が人生に於ける宝物か。 目が肥えたというわけ。 せまりくる”真紅”のなか、 身勝手きわまりない伯爵と貞淑な妻、妖艶な愛人が絡まりあう。
野性的で獣じみたジャンカルロ・ジャンニー二を伯爵にしつらえてしまうヴィスコンティ。 セックス・シンボルのラウラ・アントネッリを 貞淑な妻に化けさせてしまうヴィスコンティ。 『おもいでの夏』(’71)の清楚な未亡人ジェニファー・オニールを 妖艶な愛人に飾り立てるヴィスコンティ。 それらが全部はまっちゃうんだよなあ・・・ ラウラの裸体がくねるのを観て、 初めて「官能」という言葉の意味を知った。 伯爵の酷すぎる仕打ちに、男の嫉妬の怖ろしさを垣間見た。 「映画こそ人生の学校」と、淀川長治先生は宣ったっけ・・・
ヴィスコンティ作品のキャスティングには意外性があり、 映画ファンならつい、見届けたくなる。 アラン・ドロン、ヘルムート・バーガー、 バート・ランカスターまで、 容貌が気に入れば抜擢してしまう耽美派。 本作は遺作。また全作を観なおしたくなっちゃう! たとえ我が家に大スクリーンがなくてもね!
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