No.58『インディアン・ランナー』
- 大橋美加
- 2020年7月26日
- 読了時間: 2分
更新日:2023年5月10日
1991年 アメリカ映画 ショーン・ペン監督
(The Indian Runner)
ショーン・ペンという俳優については 容貌も演技も苦手であったのだが、 初監督作である本作を観て、悉く見直してしまった。 アメリカン・ニューシネマへの愛着を随所にちりばめながら、 時代にも受け入れやすいスタイルに仕上げている。
兄と弟というと、エリア・カザン作品ジェームス・ディーン主演 『エデンの東』(’55)が真っ先に想い起こされるが、 本作は兄と弟の重量バランスに過不足がない。 デイヴィッド・モース扮する実直な警官であり家族を愛する兄と、 ヴィゴ・モーテンセン扮するヴェトナム帰りの凶暴性ある弟、二人とも見事な適役。


家族だから、血が繋がっているから、わかりあえるはずと信じたい兄。 安住することへの不安から次第に正気を失っていく弟。 夜半のトウモロコシ畑はこんなにも不気味だったか。 丈の高い葉が黒光りし、心を覆い隠し、魂を浮遊させる。 なんとか愛そうとする兄、あくまで受けつけない弟。 かつて愛情を注いだ農園を奪われ警官となった兄。 「ここはインディアンの土地だった」と面白そうに言う弟。
ファースト・シーンとクライマックスに登場する 白塗りのネイティヴ・アメリカンのイメージには ぞくっと息が詰まる。自分の家族、自分の土地、自分の世界とは? 兄の慈愛も、弟の自問もわかる気がするから、あとを引く一作品。 ちなみにショーン・ペンの監督第二作『クロッシング・ガード』 第三作『プレッジ』も必見作と呼びたい。
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