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No.56『いそしぎ』

更新日:2023年5月10日

1965年 アメリカ映画 ヴィンセント・ミネリ監督 (The Sandpiper)

海を観たくなったら観たい映画がある。 朝霧のなか、悠々と横たわる海に、 ジョニー・マンデルのテーマソングが重なる。 「貴方の面影は、去った後も私の夢を彩り、 夜明けを照らすでしょう」という歌詞をもつ ”The Shadow of Your Smile”である。 岩に砕ける波、深紅に染まる夕焼けを映す海、 さまざまな顔をもつ海を観ることができるタイトル。 そして、浜でキャンヴァスに向かう、 エリザベス・テイラー演じるヒロイン、ローラの姿。 今回、久々に観なおし、ローラが潮風に弄ばれる黒髪を、 手ではなく筆で掻き上げる仕草に気づいた。

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ローラはこの時代には珍しいシングル・マザー。 死別でも離婚でもない。17歳で妊娠し、結婚を拒んだ女性。 「50歳を過ぎて、枕ごしに見つめ合いたい相手じゃなかったから」という台詞は、 言い訳にしてはなかなかイケてる。 9歳の一人息子ダニーが入学させられるミッション・スクールの

生真面目な校長エドワードに扮するのは、 当時の夫リチャード・バートン。 リズ・テイラーは生涯に於ける8回の結婚のうち、 バートンとだけは2回結婚している。 本作での二人の視線の絡み合いには、 「恋愛映画だいきらい」を豪語する美加であっても、興味津々。

”世紀の美女”リズのもっとも美しかった時代は18歳から22歳くらいまでと信じる。 本作撮影時は32~33歳、全体的に見るとギリギリ、 あと一歩で映画スターとしては太目と見なされる容貌。 エドワードの妻に扮した細身のエヴァ・マリー・セイントとの対比が良い。 ヒロインが画家であるという設定、 ビート族など、只の不倫物語に終わらない個性を持つ作品。 テーマソングを歌うたび、海辺の”SHACK”とリズの美しいバスト、 夕焼けの海を反芻し続けるだろう。

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