1965年 アメリカ映画 ヴィンセント・ミネリ監督
(The Sandpiper)
海を観たくなったら観たい映画がある。 朝霧のなか、悠々と横たわる海に、 ジョニー・マンデルのテーマソングが重なる。 「貴方の面影は、去った後も私の夢を彩り、 夜明けを照らすでしょう」という歌詞をもつ ”The Shadow of Your Smile”である。 岩に砕ける波、深紅に染まる夕焼けを映す海、 さまざまな顔をもつ海を観ることができるタイトル。 そして、浜でキャンヴァスに向かう、 エリザベス・テイラー演じるヒロイン、ローラの姿。 今回、久々に観なおし、ローラが潮風に弄ばれる黒髪を、 手ではなく筆で掻き上げる仕草に気づいた。
ローラはこの時代には珍しいシングル・マザー。 死別でも離婚でもない。17歳で妊娠し、結婚を拒んだ女性。 「50歳を過ぎて、枕ごしに見つめ合いたい相手じゃなかったから」という台詞は、 言い訳にしてはなかなかイケてる。 9歳の一人息子ダニーが入学させられるミッション・スクールの
生真面目な校長エドワードに扮するのは、 当時の夫リチャード・バートン。 リズ・テイラーは生涯に於ける8回の結婚のうち、 バートンとだけは2回結婚している。 本作での二人の視線の絡み合いには、 「恋愛映画だいきらい」を豪語する美加であっても、興味津々。
”世紀の美女”リズのもっとも美しかった時代は18歳から22歳くらいまでと信じる。 本作撮影時は32~33歳、全体的に見るとギリギリ、 あと一歩で映画スターとしては太目と見なされる容貌。 エドワードの妻に扮した細身のエヴァ・マリー・セイントとの対比が良い。 ヒロインが画家であるという設定、 ビート族など、只の不倫物語に終わらない個性を持つ作品。 テーマソングを歌うたび、海辺の”SHACK”とリズの美しいバスト、 夕焼けの海を反芻し続けるだろう。
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