1973年 イタリア映画 フェデリコ・フェリーニ監督
(Amarcord)
遠いあの日、三軒茶屋の名画座に行かなかったら、 この作品に出逢わなかったら、今の自分はない。 映画の魔法をかけてくれたフェデリコ・フェリーニ! 彼の自伝的名作のタイトルは、今では使われない言葉で 「私は覚えている」(エム・エルコルド)が訛ったもの。
イタリア北部の町リミニに春を告げる風が吹き、綿毛が空を舞う。 髭のオジサンがカメラ目線で観客に話しかけ、 「え?これ、町を紹介するドキュメンタリーなの?」と、 一瞬ぎょっとする。 フェリーニ作品には『ローマ』『道化師』など、 ドキュメンタリーとドラマをやすやすと超える作品が存在するが、 なにしろ、本作は美加の”フェリーニ初体験”だものね! その驚きは忘れ難い。 すっかり夢中になり、他のフェリーニ作品を上映している 名画座を探しまわったっけ・・・
冬の魔女を大焚火で燃やし春を迎える祭り、豪華客船、 海外からのVIPが滞在した『グランドホテル』にまつわるエピソード。 町一番の気立ての良い美人、巨体・巨乳の煙草屋の女、 色情狂の知的障害らしき女などなど、 フェリーニが描くデフォルメされた女たち。 一度見たら忘れられない”顔”を持つ、学校の先生たち、 悪ガキたち、ケッサク。何度観かえしても爆笑まちがいなし! そして、ファシズムに翻弄されていく愛すべき家族たち・・・
自分の故郷のちいさな田舎町。ありふれた日常が、 フェリーニの手にかかると、世界一のファンタジーに早変わり。 ジャズソング”STORMY WEATHER” もそこここに流れ来る。 再び綿毛が舞い、少年はすこし大人になる。 ああ、また泣いちゃった!
”ア”から始まる手持ちの名画は、128作のうち50作目の本作で終えたい。 VHSでしか持たない名作もたくさんあるが、それはまた、いつか。 次回からは”イ”で始まる手持ちの作品を観ていこう。 乞うご期待!
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