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No.44『あなただけ今晩は』

更新日:2023年5月12日

1963年 アメリカ映画 ビリー・ワイルダー監督 (Irma La Douce)

ジャック・レモンという名優を最も活かしきった監督といえば、 やはりビリー・ワイルダーだろうか。 小柄で猫背、くりっとした愛らしい瞳を持ちながら、 少しシニカルな表情を湛え、ひとたび役になりきると 世紀の美男美女も食ってしまう、唯一無二の役者だったよなあ・・・

本作はワイルダーが名作『アパートの鍵貸します』(’60)のあとに、 ジャック・レモンとシャーリー・マックレーンを再び起用したコメディ。 舞台設定はパリの裏町。セーヌ川のシーンを除き、 すべてカラフルなセット撮影が目に楽しい。 気立てのいい娼婦イルマに扮して魅力全開のシャーリー・マックレーン。 ブルネットにグリーンのリボンとストッキングが印象的。 レモンは生真面目な警官としてこの”夜の街”に赴任し、 のっぴきならない事態に足を踏み入れてゆく!

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いやはや、本作でのレモンの怪演は、 キューブリックの『博士の異常な愛情』(’64)に於ける ピーター・セラーズとも比較したくなる迫力! レモンに引きずられず、マイ・ペースを貫く演技のマックレーンも流石。 ワイルダーは当初イルマ役に『お熱いのがお好き』(59’)で起用した マリリン・モンローをと考えていたそうだが、 モンローが生きていたとしても、マックレーンで正解だったと信じる。 すらりと細身のイルマは少女っぽさが残り、 色気で勝負の他の娼婦たちとの違いが際立って良い。 ケッサクなのはルー・ジャコビが演じたカフェのマスター。 法律も医療も手掛けてきたという謎の人物にして 人望ある酒場の賢人!こういうマスター、いるよねえ・・・

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