1963年 アメリカ映画 ビリー・ワイルダー監督
(Irma La Douce)
ジャック・レモンという名優を最も活かしきった監督といえば、 やはりビリー・ワイルダーだろうか。 小柄で猫背、くりっとした愛らしい瞳を持ちながら、 少しシニカルな表情を湛え、ひとたび役になりきると 世紀の美男美女も食ってしまう、唯一無二の役者だったよなあ・・・
本作はワイルダーが名作『アパートの鍵貸します』(’60)のあとに、 ジャック・レモンとシャーリー・マックレーンを再び起用したコメディ。 舞台設定はパリの裏町。セーヌ川のシーンを除き、 すべてカラフルなセット撮影が目に楽しい。 気立てのいい娼婦イルマに扮して魅力全開のシャーリー・マックレーン。 ブルネットにグリーンのリボンとストッキングが印象的。 レモンは生真面目な警官としてこの”夜の街”に赴任し、 のっぴきならない事態に足を踏み入れてゆく!
いやはや、本作でのレモンの怪演は、 キューブリックの『博士の異常な愛情』(’64)に於ける ピーター・セラーズとも比較したくなる迫力! レモンに引きずられず、マイ・ペースを貫く演技のマックレーンも流石。 ワイルダーは当初イルマ役に『お熱いのがお好き』(59’)で起用した マリリン・モンローをと考えていたそうだが、 モンローが生きていたとしても、マックレーンで正解だったと信じる。 すらりと細身のイルマは少女っぽさが残り、 色気で勝負の他の娼婦たちとの違いが際立って良い。 ケッサクなのはルー・ジャコビが演じたカフェのマスター。 法律も医療も手掛けてきたという謎の人物にして 人望ある酒場の賢人!こういうマスター、いるよねえ・・・
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