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No.364『第三の男』

執筆者の写真: 大橋美加大橋美加

1949年イギリス映画

キャロル・リード監督

『第三の男』(The third man)

 “憎みきれない悪党“ハリー・ライムを

オーソン・ウェルズがふてぶてしく演じきる。

大きな身体に似つかわしくない、不出来な子どものような顔。





翻弄されるアメリカ人ホリーにジョゼフ・コットン。


薄倖の美女アンナにアリダ・ヴァリ。


第二次世界大戦後のウィーンという特殊な舞台設定でなければ、
成り立たなかった映画か。

ツィターのリズムに煽られ、斜めに傾ぐ画面。

夜の闇に浮かび上がる影から匂い立つ疑惑。

親友に呼ばれてアメリカからやってきたはずのホリーは、

ひと目で親友の恋人アンナにご執心となる。



アンナの孤独な心を代弁するのはちいさな猫。

花束を携えたホリーにそっぽを向き、闇に潜むハリーの靴を舐める。


ホリーとハリー、似通う名前も皮肉な余韻を残す。


クライマックスでのハリーが見せる一瞬の表情に、

すべてが表れているのではないか。


諦めと郷愁。

ラストの並木道をやり過ごすアンナの顔にも、

くっきりと写し出されていたような気がする。

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