1949年イギリス映画
キャロル・リード監督
『第三の男』(The third man)
“憎みきれない悪党“ハリー・ライムを
オーソン・ウェルズがふてぶてしく演じきる。
大きな身体に似つかわしくない、不出来な子どものような顔。



翻弄されるアメリカ人ホリーにジョゼフ・コットン。
薄倖の美女アンナにアリダ・ヴァリ。
第二次世界大戦後のウィーンという特殊な舞台設定でなければ、
成り立たなかった映画か。
ツィターのリズムに煽られ、斜めに傾ぐ画面。
夜の闇に浮かび上がる影から匂い立つ疑惑。
親友に呼ばれてアメリカからやってきたはずのホリーは、
ひと目で親友の恋人アンナにご執心となる。
アンナの孤独な心を代弁するのはちいさな猫。
花束を携えたホリーにそっぽを向き、闇に潜むハリーの靴を舐める。
ホリーとハリー、似通う名前も皮肉な余韻を残す。
クライマックスでのハリーが見せる一瞬の表情に、
すべてが表れているのではないか。
諦めと郷愁。
ラストの並木道をやり過ごすアンナの顔にも、
くっきりと写し出されていたような気がする。
Comments