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No.361『太陽を盗んだ男』

執筆者の写真: 大橋美加大橋美加
1979年 日本映画 長谷川和彦監督

『太陽を盗んだ男』


新宿の映画館の大きなスクリーンで観た記憶が鮮やかに蘇る。


孤独な29歳の中学校理科教師が、

プルトニウムを盗み出して原子爆弾を作る物語。





王子様ヘアの沢田研二が

「カッコよくない」役を演じる意外さ。


菅原文太はまるでのちのロボコップの如く、

ギクシャクと血まなこで食い下がる。


老バスジャック犯人に

黒澤や成瀬作品の脇を占めていた

怪優・伊藤雄之助をもってくるオフビート感。


監督が主人公のキャラクターを作り込むため

インタヴューしたという、

様々な職種の人々のなかで、

ヘリコプター操縦士の言葉

「毎日毎日、町の俯瞰を見ていると、

東京が自分のもののように思えてくる」という

コメントが印象的。


錯覚が拡張してゆく恐怖。


解決しない、

収まらない、

安堵の余地のない、


そんな映画が、

今は無い。

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