大橋美加2024年2月28日No.319『地獄の逃避行』1973年 アメリカ映画 テレンス・マリック監督(Badlands)果てしない平原に、夕日が沈み、朝日が昇る。なぜ、涙があふれてくるのだろう。人生は一度しかないからか。”マジック・アワー“を教えてくれた映画作家テレンス・マリックの、長編第一作である。ゴミ清掃員の25歳の男に扮するのは、長い睫毛に縁どられた秀麗な目元のマーティン・シーン。退屈な生活を送る15歳の少女には、ソバカスに赤毛のシシー・スペイセク。ともに実年齢より10歳近く若い役が似合っている。やもめの父に扮するのは渋いウォーレン・オーツ、こちらはちょいと役不足。全編を少女のナレーションで綴り、若い二人の愚かで酷い逃避行を、限りなく美しい景観のなかに放流するマリック。カーラジオから流れるナット・キング・コールの”A Blossom Fell“で二人がダンスするシーンが忘れられない。「偽りの言葉で花は散る」マリックが実際の事件をフェアリー・テイルに仕立てたことに気づく。「もっと別の人生があったはず」なんて台詞は、言いたくなくなってしまうのだ。
1973年 アメリカ映画 テレンス・マリック監督(Badlands)果てしない平原に、夕日が沈み、朝日が昇る。なぜ、涙があふれてくるのだろう。人生は一度しかないからか。”マジック・アワー“を教えてくれた映画作家テレンス・マリックの、長編第一作である。ゴミ清掃員の25歳の男に扮するのは、長い睫毛に縁どられた秀麗な目元のマーティン・シーン。退屈な生活を送る15歳の少女には、ソバカスに赤毛のシシー・スペイセク。ともに実年齢より10歳近く若い役が似合っている。やもめの父に扮するのは渋いウォーレン・オーツ、こちらはちょいと役不足。全編を少女のナレーションで綴り、若い二人の愚かで酷い逃避行を、限りなく美しい景観のなかに放流するマリック。カーラジオから流れるナット・キング・コールの”A Blossom Fell“で二人がダンスするシーンが忘れられない。「偽りの言葉で花は散る」マリックが実際の事件をフェアリー・テイルに仕立てたことに気づく。「もっと別の人生があったはず」なんて台詞は、言いたくなくなってしまうのだ。
Komentar