1952年 日本映画 溝口健二監督
思えば、田中絹代はエロティシズムと最もかけ離れた女優ではないか。
小づくりな面差し、肉付きの乏しい頼り無げな体つき。
まさに“貞淑”という言葉がふさわしい。
溝口はよくぞ田中絹代に”好色一代女“を演じさせたよなあ…
三船敏郎、宇野重吉、進藤英太郎、加東大介ら名優陣は
添え物扱いという、徹底した演出。
坂を転がるように花の命を踏み躙られるヒロイン・お春を、
哀れに想う暇もない展開!
夜鷹にまで身を落としたヒロインを、 指一本触れずに蹂躙する遍路の百姓たち。
追い打ちをかけるエピソードにも、
負けじとばかりにゾッとするような笑みを返した田中絹代の怪演は、
他作品では決して見ることが出来ない迫力。
長回しや俯瞰など、溝口の”画“も堪能できる、渾身の一作である。
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