top of page

No.274『さらば箱舟』

1984年 日本映画 寺山修司監督

『さらば箱舟』(Farewell to the Ark)


半紙に書かれた言葉、言葉、言葉・・・。

名詞ばかり連なる寺山修司の短歌を想起させられる。

寺山の映画作品は短編も含め随分と観たが、本作が遺作である。

貞操帯という道具。

女性の人間性を悉く侵害するグロテスクな代物。

艶姿が似合う女優・小川真由美が、坊主刈りに貞操帯装着という、

ショッキングな姿で宿命の女・スエを演じる。

憤懣を眼光に秘めた山崎努、男の獣性全開の原田芳雄。

この三つ巴、おどろおどろしく、狂おしい。


本作は確かに劇場で観た筈であるのに、パンフレットが見当たらない。

騙し絵のような127分を反芻し、山崎努扮する捨吉の如く、

記憶を操作されてしまったのではないかと怯えるしかない。


G.G.マルケス作品の映画化は『エレンディラ』(’83)『コレラの時代の愛』(2007)を観たが、

本作『さらば箱舟』はかなりの別ものか。


カラー・着色映像・黒白映像が交錯するループのストーリーは、

捨吉とスエの逃れられないさだめを見せつける。


ラスト・シーンは寺山にとっての死後の世界なのだろうか・・・

Comments


bottom of page