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No.270『さらば愛しき女よ』

"大橋美加のシネマフル・デイズ"

1975年 アメリカ映画 ディック・リチャーズ監督

(Farewell,My Lovely)


言葉のダンディズム、レイモンド・チャンドラーを映画化する意味とは?

チャンドラーにはまった時期があると『大いなる眠り』の項で書いたが、

初めて読んだのは本作『さらば、愛しき女よ』だったと記憶する。


大男ムース・マロイの純情ぶりに哀れさを感じるとともに、

子どもの頃に亡き我が父宅のリヴィング・ルームで見た、

突拍子もなく大きいmoose(ヘラジカ)の頭部を想い起こしたものである!


ロバート・ミッチャムが演じる フィリップ・マーロウは少し年かさのイメージだが、

あの低く響く声でのナレーションは活きている。

そう、“言葉のダンディズム”ですからね!


本作の最たる魅力は、 シャーロット・ランプリングに他ならない。

すらりとしなやかな肢体、 相手の魂を射抜くような眼、

甘く煮たマロンのような髪。

ムース・マロイは彼女のことを 「レースの下着のような女」と言う。


哀感たっぷりに流れるサックスのテーマソングも良いが、

古いジャズソングもFEATUREされている。

ジュール・スタインのペンになる ”I’ve Heard that Song Before”

今では歌う人が殆どない、 ノスタルジックなジャズソング。

シルヴィア・マイルズとR.ミッチャムが口ずさむ ”SUNDAY”こちらも然り。


翡翠のネックレスを臙脂色のドレスと 纏うシャーロット・ランプリング。

あの色合いを眼で観る愉しみは ”言葉”の世界ではあり得ない。

映画に感謝!

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