1969年 イギリス映画 ケン・ローチ監督
(Kes)
”ケ”から始まる手持ちの名画、 1作目はケン・ローチ作品『ケス』を何十年ぶりかで観なおす。 労働者階級に育ち、彼らの生きる姿を妥協せず描き続ける、 おん年86歳となる、イギリス映画界が誇る名匠ローチ。 本作は1990年代半ばのリヴァイヴァル上映で観た。
まずは、主人公の少年ビリーのやつれたような顔に驚いたことを想い出す。 目の下にクマのある15歳の男の子なんているの?という具合。


舞台となるのはヨークシャー地方の炭坑町。 狭いベッドに兄と背中合わせに眠る小柄で 痩せっぽちのビリーの姿から映画は始まり、 シチュエイションの全てが見てとれる。
父親は蒸発したらしく、男出入りの激しい母と 炭坑で働く粗暴な兄と三人暮らしのビリー。 緑が美しい草原で時を過ごすビリーは、 ”ケス”と名付けたKESTREL(小型の隼)と 過ごす時間に安らぎを見つけてゆく。
学校でのシーンが印象深い。 生徒たちをあからさまに見下す先生も、 めげずに出し抜こうとする悪ガキたちも然り。
ひとは自分の一部を踏み台にして成長しなければならない。
それを決めるのは、生まれた土地なのか、
親なのか、学校なのか。
草の色に塗りこめられた色褪せることのない名作に、
ぜひ触れて欲しい。
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