1968年 日本映画 森谷司郎監督
吹きすさぶ風の音のなか、 雪の舞う墓前に立つ、 小林桂樹演じる主人公の姿。 その苦々しい顔が目に焼きつく。 次に、ストーリーの核心に迫るシーンが挿入され、 ずん!と現われる黒地白ヌキのタイトル『首』! 首という字は、 ほんとうに人間の首みたいだなと、 ぞっとする滑り出し。
時は第二次世界大戦中、 極寒の地の炭鉱夫が警察に連行されたまま、不審死を遂げる。 遺族の依頼により真相を探るべく乗り出すのが、 小林桂樹扮する正木弁護士。 下川辰平、神山繁、清水将夫など達者陣が脇を固める。 際立つのは清水将夫扮する”首切り人”、 確かに美味しい役に違いないが、この存在感、圧巻。
クロース・アップが苦しくなる。 真相解明に対し、狂気とも呼べる執着ぶりを発揮していく主人公。 なぜ彼はここまで、やり遂げたのか・・・?
事実である事件、実在である正木弁護士。 ユーモラスな役どころに定評のあった 小林桂樹の鬼気迫る演技は、まさに役者魂。
”実”のある彼が演じたことにより、
劇的な事件に血が通う。
刺激的なサスペンス劇でありながら、
執拗な反戦映画でもあると信じる一作品。
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