1954年 デンマーク映画 カール・テオドール・ドライヤー監督 (Ordet)
空の広い田園風景から、 窓辺であどけなさの残る面差しの青年が ベッドから起き上がるファースト・ショット。 地主の三男坊である。 彼は老齢の父親を起こし、長男の嫁、長男が起き出す。 皆、乱心の次男がまたもや徘徊しているのかと、 案じているのである。 舞台劇さながらに徐に登場する人物たち。 無駄を省いた、静謐な画面構成。
大きなお腹で一家を担う長男の嫁は、 幼い二人の娘を育てながら、頑固なやもめの父親、無信仰の長男、 自らをキリストと信じ込み乱心とされる次男、 宗派の違いにより結婚を許されない娘と 恋仲になっている三男を抱えている。 彼女の気苦労を知るはずの父親は、 「息子を産むこと以外は何でも出来るんだな」などと、 残酷な言葉を吐く。然もユーモラスに!
落胆も、希望も覆い隠して、淡々と描かれてゆく一家の運命。 ”Key Person”は長男の幼い長女。 彼女の微笑みが、すべてを贖う。無邪気な救いの微笑み。 ”無垢”な存在のみが救済となるというテーマは、 この後も映画のなかで 永遠に受け継がれてゆくことになる。 映画こそ、奇跡!
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