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No.169『木靴の樹』

更新日:4月22日

1978年イタリア映画エルマンノ・オルミ監督 (L’albero degli Zoccoli)

二日に一句は作ろうと日々を送っているが、 俳句と切り離せない農業には全く縁のない東京っ子の身。 『NHK BS俳句王国』にゲスト出演していた時代は、 結構なコンプレックスであった。農業は、映画や絵画でしか知らない。 農民たちの佇まいだけでも知ることが出来たら。

エルマンノ・オルミ監督の出世作である本作は、 19世紀末のイタリア・ベルガモ近郊の貧しい農民たちの生活を、 実際の農民たちの姿を借りて描き尽くした力作。 カンヌのパルムドール他、数々の賞に輝いた。 ミレーの『落穂拾い』『種蒔く人』などを想わせる映像が圧巻。

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物語のマスコット的存在の愛らしい少年ミネクの一家、 美しい娘マッダレーナを持つ一家、6人の子を抱えた未亡人の一家、 けちんぼうの主の一家、物語は四軒の農家のエピソードを描いてゆく。 彼らの悲喜こもごもとは一切の関係がないかのように存在するのは、 農民の収穫3分の2を搾取する地主一家。

カラーでありながら色を感じられないルック。 農民たちの貧しさゆえの”色”のない日常。 ”イ”の項で紹介した、ジョン・フォード監督『怒りの葡萄』が彷彿となる。 オルミ監督は2018年に86歳で亡くなるまで、独自性のある作品を作り続けた。 晩年にアイディアあふれるアート志向の作品を遺してくれたことには、とりわけ感心する。

「映画が学校だったのね」と語ってくださった、今は亡き淀川長治先生を想い出す。 農民映画に駄作なし、炭鉱映画に駄作なし! 知らなくたって、いいじゃないか! 映画から学び、感じとれることはたくさん、沢山あるはず!

#種蒔く人 #怒りの葡萄 #淀川長治 #mikaohashi #シネマフルデイズ #エルマンノオルミ #落穂拾い #大橋美加

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