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No.161『奇跡の人』

更新日:2023年4月23日

1962年 アメリカ映画 アーサー・ペン監督 (The Miracle Worker)

子守唄は誰のためにあるのだろう。 もちろん、我が子のため、別れた愛しいひとのため。 いや、もしかしたら、自分のためにあるのかも知れない。

小学校の教科書で知ったヘレン・ケラーの存在を、 映画『奇跡の人』で初めて観たのは、名画座でだったかな。 メロディはきっと子どもの頃から聞いていたはずの、 マザー・グース”Hush Little Baby”の歌詞を 知るきっかけは本作であり、観おわったあとも、ずっと耳に残っていた。

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まず、黒白で撮ったことが勝因。誰もが知る奇跡的な物語を、 観客から距離を持たせることに成功している。 そして、何といっても二人の女優の力。 サリヴァン先生に扮したアン・バンクロフト、ヘレンを演じたパティ・デューク、

舞台でのキャストが映画に移行されただけのことはあり、 ほかを寄せつけない二人の世界が構築され、 ともにオスカー受賞もうなずける。

”The Miracle Worker”アニー・サリヴァンが、 ヘレンの父親から「君はこの子を好きかね?」と訊かれ、 「あなたは?」と訊き返すシーンがある。 先妻との間にも、ヘレンのあとにも子のある父親は一瞬、答えられない。

一途ではあるが苦労人のサリヴァンが、 相手の言葉尻を捉えて真意を突くやりとりであり、今回、観なおしてドキッとした!

亡くした愛しい者へ、ひとり子守唄を歌うアニー・サリヴァンの姿には、 何度観ても涙を禁じ得ない。 我が子に何でも与えてあげるという ”Hush Little Baby”の歌詞が、虚しく響くシーンである。

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