1982年 日本映画 中川信夫監督
日本映画は、観るべき名作を押さえている程度で、 決して自慢できるほど観ていない。
それでも、意外な作品を観ていたりもする。 深夜のノーカット番組で本作を観たときは、只々怖かった。 大の怖がりのうえ、西洋のホラー映画より、和ものの怪談は殊に苦手であったのだから。
舞台は天保十三年、登場人物は三人きり。 我が青春時代に大ヒット曲『夜明けの停車場』をもつ俳優・石橋正次が扮する太九郎、 藤間紫を母に持つ藤間文彦が扮する小平次、そして、妖艶な宮下順子のおちかで三角形となる。


原作は鈴木泉三郎の同名戯曲、幽霊役で名を馳せた役者が殺されて 幽霊となる小幡小平次の怪談話をアレンジし、 「殺したはずの男が何度でも生きて舞い戻ってくるが、 もしかしたら死んでいないのかも知れない」という、謎めいた物語。 如何にも舞台劇を想わせるセット撮影と、ロケーションの対比。 緑したたる渓流に、ざんばら髪に痣のある 幽霊が立っているなんて、凄すぎる発想。 なんと予算が一千万円であったとは! やはり映画はアイディアとこだわりありきだよなあ! ATG作品群、改めて観なおしたいもの目白押し。
役者を辞めて久しい藤間文彦主演作、そして中川信夫監督遺作でもある本作、 いちど”幽明の境”に足を踏み入れては・・・?
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