2009年 ギリシャ映画 ヨルゴス・ランティモス監督
(Dogtooth)
ギリシャ映画といえば、長年テオ・アンゲロプロス作品群に注目してきた。 来日の記者会見では果敢にも質問した。 ”長回しの巨匠”よろしく答えも長く、1時間の会見中、 美加の質問を含む五つの質問にしか答えなかったっけ・・・(笑)
アンゲロプロスの他界と前後し、本作で注目されたのが1973年アテネ生まれの ヨルゴス・ランティモス。 ミニマルな室内劇を想わせる本作、本質はきわめて性的な物語。 クロース・アップを多用しながら、人間の強靭な性癖を不必要なまでに見せつける。
広大な敷地内の邸宅に暮らす年配の両親と、 20代とおぼしき長女・次女・長男の五人家族。芝生のひろがる庭、大きなプール。 然し、まわりには高い塀が立ち塞がり、三人の姉弟は外界に出る様子はない。 両親は我が子たちに、人と人との繋がりかた、言葉の真の意味を教えない。 毒をもって毒を制したい両親と、それゆえ奇妙で幼稚な姉弟。 さて、この一家の行く末は?
親は我が子を思い通りには出来ない。 噓で固めた神話も、ちいさな綻びで引き裂かれる。
シナトラがカウント・ベイシー楽団で歌う ”Fly Me To The Moon”が思わぬシーンで使われ、驚いた。 オリヴァー・ストーン作品『ウォール街』、 クリント・イーストウッド作品『スペース・カウボーイ』ほか、、 数々の映画作品に引用された名ヴァージョンだが、 最もおさまりの悪い使われかたかなあ!
ランティモス監督はこの後も、痒いところに手の届かない不条理劇を作ってゆく。
原点をご覧あれ。
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