1974年 アメリカ・イギリス合作映画 シドニー・ルメット監督
(Murder on the Orient Express)
クセのある声が特徴的なイギリスの演技派アルバート・フィニーが、 名探偵エルキュール・ポワロに扮した唯一の作品。 大昔に原作も読んだが、やはりこのルメット版に親しみを覚える。 タイトル・バックにワルツが流れ、次々とスター俳優の名前が アール・デコ調の文字で出てくれば、喜ばない映画ファンはいない! 各国から集まってきた、ワケアリの乗客たち。 訛を聞き分けるのもまた一興。
キイ・ナンバーは”12”。12箇所の刺し傷、12人の容疑者。
雪で閉ざされた列車の瀟洒なサロンで、繰り広げられる謎解き。
シドニー・ルメット監督を知ったのは、『十二人の怒れる男』(’57)
だが、12人の陪審員のなかの一人、マーティン・バルサムが、
本作ではポワロの友人ビアンキに扮し、ムード・メイカー的役割を果たす。
乗客のひとりであるヴァネッサ・レッドグレイヴは、
”ア”の項で紹介した『アガサ/愛の失踪事件』(’79)に於いて、
アガサ・クリスティ本人に扮することとなる。
憎まれ役をこの上なく憎々しげに演じきった
リチャード・ウィドマーク、往年の美貌とは見紛う地味な役柄で
三つ目のオスカーをゲットしたイングリッド・バーグマン、
ベルギー訛で皆を煙に巻きながら、
良心に賭けたポワロを熱演したアルバート・フィニー。
サウンド・トラックを手がけたのは、
ジャズ・ピアニストでもあったリチャード・ロドニー・ベネット。
ピンキー・ウィンタースの伴奏を務めたアルバム
”Rain Sometimes”は愛聴盤!
ラストのサーヴィス・ショットも含め、映画人への愛を感じる、
ゴージャスなクライム・ストーリーに仕上がっている。
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