大橋美加のシネマフル・デイズ
1970年 アメリカ映画 ミケランジェロ・アントニオーニ監督
(ZABRISKIE POINT)
アントニオーニは景観に頼る映画作家であるとは認識していたが、
空からのアプローチ、砂漠でのメイク・ラヴ、
いくつもの肉体が砂まみれで絡み合うシーンが衝撃的。
イタリア人の映画作家がアメリカを描き倒す、刹那的なパッションを感じる作品である。
反体制紛争の只中にある南カリフォルニアのとある大学。
警官隊による死者を目の当たりにした主人公マークは構内を脱出、
空港で小型飛行機を拝借し、砂漠地帯へ飛び立つ。
ひとりで車を駆る若い女ダリアとの暫しの”TRIP”と相成る・・・
若者は死んではならないのに、映画は若者の死を描く。
描きつづけなければならないことこそ、悲劇。
本作の主人公を演じたマーク・フレチェットが実生活で若くして獄中死した事実も心に痛い。
ダリアを体当たりで演じたダリア・ハルプリンはデニス・ホッパー三人目の妻となった。
美しくも無残な爆発シーンは映画史上に燦然と炎上する。
純粋であることの虚しさを発散させながら燃える夕陽。
アントニオーニお得意の”愛の不毛”は、
”ア”の項で取りあげた『赤い砂漠』(64’)で観とどけて欲しい。
『砂丘』は彼の作品群に於いて”頽廃”を感じさせない稀有な一作かも知れない。
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