1966年 アメリカ映画 シドニー・ポラック監督
(The Property is Condemned)
今は亡き我が父・巨泉とは、よくジャズや映画の話をした。 父は英語が堪能であったため、英語圏の映画贔屓であった。
そんな折、 「最近の映画配給会社は少し怠慢だな。 原題をそのまま片仮名でタイトルにするなんて」と言ったことがある。
キューブリックの『アイズ・ワイド・シャット』が公開されたころだ。
「美加ちゃん、”EYES WIDE”とくれば”OPEN”だよ、 日本語題名を作らなきゃいけない」
今回、本作を観かえし、『雨のニューオリンズ』と 邦題をつけたのは誰であったかと想像をめぐらせた。
原題を直訳すれば、ダブル・ミーニングを加味すれど、
「財産没収」だもの!
物語はアメリカ南部の寂れた町から始まる。 鉄道従業員たちを相手に宿屋を営む母と二人の娘。
長女アルバに扮するのはナタリー・ウッド。 4歳から映画出演し、『ウエストサイド物語』(’61)で ヒロインを演じてから5年後の作品。
けばけばしい化粧と安っぽいドレスも、 若く美しい姿態の威力で欲目となる。
姉の美貌に憧れと反発を感じる妹ウィリーに扮するのは 傑作『アラバマ物語』(’62)のスカウト役で知られるメアリー・バダム。
そして、鉄道従業員調査員として、 ニューオリンズからやってくるオーエンに扮するのは、 大スターになる前のロバート・レッドフォード。
体当たりのナタリーと、彼女に翻弄されるレッドフォード。 母と長女の愛憎、姉妹の葛藤、女たちをこれでもかと貶める
テネシー・ウィリアムズの戯曲に、職人ポラックはオブラートを被せたか。
ナタリー・ウッドは決して好きな女優ではないが、 この時代、このアルバ役はほかの誰が演じられただろうか。
主題歌”WISH ME A RAINBOW”ほか、”JUST ONE MORE CHANCE”など、 ディキシーランド・ジャズも遠くから聞こえてくる。
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