1965年 日本映画 黒澤明監督
”ア”から始まる名作映画、日本映画をもうひとついきましょうか。 黒澤作品はほぼ全作品を観ているはずだが、
何回も観かえしているものは多くない。 本作も全編を観るのは久しぶり。185分あるからねえ。
モノクロームの画面に、黒光りの瓦が連なる。 すらりとした若き加山雄三の後ろ姿が、
『小石川養生所』の門をくぐるところから、物語は始まる。
長崎で蘭方医学を修め、失恋以外の苦しみなど知ろうはずがない 美男子・保本登(加山)の成長物語である。
そして登場する、三船敏郎扮する”赤ひげ”新出去定。 のっぺりと美しい加山を霞ませる、まさしく怒れる虎!!
黒澤組と呼びたい名役者陣が次から次へと登場、 それぞれの人生劇が提示されてゆく。
思わず膝を乗りださずにはいられない プロットばかりであり、長丁場を全く飽きさせない見事さ。
”赤ひげ”に「生まれながらの色情狂」と言わしめた、 香川京子演じる狂女の美しさ、怖さ。
妻への純愛を貫いた山崎努扮する車大工の哀感。 そして、天才子役・頭師佳孝の奇跡的な名演!
頭師と母役・菅井きんは、 その後の『どですかでん』でも母子を演じることとなる。
三船敏郎さんのお嬢さん・美佳さんと、 テレビ局のメイク室で隣同士になったことがある。
会話になり、「お父様の作品は、黒澤作品から ”寅さん”のゲストまで、殆ど観ていますよ!」と告げたところ、
「ありがとうございます!”寅さん”での役が、 素顔の父に一番近いと思います!」とのこと。
そういえば、あの役も医師(獣医)だったっけ・・・
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