1952年 イギリス映画 ジョン・ヒューストン監督
(Moulin Rouge)
アートだいすきゆえ、画家の伝記的映画はすべて観ているつもり。
なかでも本作は特異かも。映画まるごとロートレックの絵! 『ムーラン・ルージュ』の踊り子たち、
ミュージシャンたちを描いたタイトル・バックに、 テーマソングが流れる。 1890年パリ。山高帽にたっぷりと髭を蓄え、 コニャックをがぶ飲みしながら、 カンカンのダンサーたちを描いてゆくロートレックの姿。 画面の色合い全体がロートレックの絵をイメージして作られ、 まるでロートレック本人が 自分の描いた絵のなかにいるように見える!
伯爵家出自の父母が従兄妹婚であったため、 少年時代に骨折した脚の骨がつかず、 脚の成長が止まってしまったというロートレック。 演じたホセ・ファーラー(フェラー)は膝で歩いたという。 彼は父親役と二役を演じ、二度目のオスカー・ノミニーとなった。 画力の自尊と容貌のひけ目からか、他人に浴びせる台詞が多く、 舞台でも実力を発揮してきたファーラーの美声が活かされている。
ポスターを”アート”の域に押し上げたロートレック、 印刷所で自ら色を調合するシーンなどもあり。 父の伯爵は、息子の絵がルーブル美術館に飾られると決まり 漸く心を動かすが、時すでに遅し・・・ 哀感に満ちた幻想的なラストは忘れ難い。
美しいメロディのテーマソング『ムーラン・ルージュの歌』、 ジャズ系シンガーのヴァージョンはあまり聞かない。 ファーラーの三番目の妻であったローズマリー・クルーニーは ジャズソングからポップスまで歌いこなす歌手であり、 手持ちのアルバムもかなりあるが、この曲は思い当たらない。 時間があるうちに譜面を作って自分で歌うかな!
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