1978年 スウェーデン映画 イングマール・ベルイマン監督
( Höstsonaten、英語: Autumn Sonata)
初めて本作を観た時のことを想起すると、冷や汗が出る。
女性にとって永遠のテーマである、母と娘の物語であるから。
そして本作は、大女優イングリッド・バーグマンの
劇場用長編映画としての遺作となるから。 }
バーグマン扮する、世界的に活躍してきたコンサート・ピアニストが
ノルウェイ北部の村に住む娘の家にやってくる。
63歳にして、すらりとスタイルが良く、
コートとスラックスが似合う華やかな
母親シャルロッテ。
迎えるのはリヴ・ウルマン扮する四十路に近い娘エヴァ。
年かさの牧師である夫と静かな暮らしをしている。
ウルマンはベルインマン監督の公私に渡るパートナーでもあった、 やはり国際派女優。バーグマンほどの美人ではないが、 ”美人役”も随分とこなしてきた女優。 本作では髪型や眼鏡により、母に比べて見劣りする役どころである。
7年ぶりの再会を果たした母娘の心の”澱”が焙り出されてゆく。
クローズ・アップを多用した二人の名女優の丁々発止は、
まばたきも出来ないほどの緊張感のうち、あっという間にループに陥る。
イングリッド・バーグマンは本作で渾身の力演を見せたあと、
1982年に67歳で亡くなった。
思えば彼女自身も夫と娘を残し、ロベルト・ロッセリーニ監督との恋に走り、
4人の子をもうけ、さらに別の男性と結婚した”母”である。
「年をとることは怖くない。年をとって演じられる
素敵な役があるかということのほうが心配」と語ったバーグマン。
最後の長編映画である本作で、最も自分を曝け出せる役を演じきったような気がする。
Comments