1973年 イタリア映画 リリアーナ・カヴァー二監督
(The Night Porter)
”倒錯”という言葉を初めて知った。 本作の初公開当時は中学生であり、 確か数年後に名画座で上映された際に観たはずだが、 それでも若い娘であったため、 爛れたエロティシズムばかりが脳裏に焼きつき、 女性監督による作品ということも含み、到底理解はできなかった。
主演のシャーロット・ランプリングのシャープな魅力に救われる。 これがグラマー女優であったら、ポルノ紛いになりかねない。 ダーク・ボガードは片頬で小さく嗤う表情にクセがあり、 変質的な役柄が似合う。 この二人の道行きに、目が離せなくなる・・・
今回、久々に観て感じたのは”宿命”という言葉。 ナチスという狂気、 ひいては1957年ウィーンという舞台設定は別としても、 二人が再会したことは”宿命”としか呼べない。 ”宿命”に荷担するものは”執着”か。
決して消せない烙印を焼きつけあった男と女を、 カヴァーニ監督はあたかも羨望のまなざしで描き尽くす。
シャーロット・ランプリングに一度だけ、お会いしたことがある。 確かフランソワ・オゾン作品で来日したパーティか。 本作から30年は経過していただろうか。 穏やかな物腰の落ち着いた50代半ばの佇まいであったが、 相手の心を見透かすような眼力は忘れられない。
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