大橋美加のシネマフル・デイズ
2010年 ノルウェー・フランス・スウェーデン・ポーランド合作映画
マリウス・ホルスト監督
(Kongen av Bastøy )
門盲の少年が紡ぐ、傷を負った鯨の物語。
その口から出た言葉を文字にする、もうひとりの少年。
言葉は絆となる。
光の射さない、冷たい色、寒い色に支配されている島。
舞台は1915年、ノルウェーのオスロ南方にある孤島バストイ島の
少年矯正施設に、二人の少年が送り込まれるところから、映画は始まる。
細身で色白のイーヴァル、もう一人はガッチリとした体格に 不敵な面構えのエーリングである。
既にこの二人を同等に”少年”と括って然るべきかと疑問の湧く滑り出し。
もう少しで卒院である優等生オーラヴと、視線を交わすエーリング。
院の日常は感情表現を排して淡々と描かれるが、ふと顔を見るとあどけない子もいる。
収容されているのは11歳から18歳。
それぞれに闇を抱えてはいるが、此処は刑務所ではない。
規則を守っていれば、やがては卒院できるのだ。
獣の魂を宿した眼光を放つエーリングの出現により、突き動かされてゆく少年たち・・・
当初は反発しながらも、次第に心を通わせてゆくエーリングとオーラヴ。
事実を下敷きにしたストーリーに、歯止めは掛けられない。
院長には国際的に活躍するスウェーデン出身のステラン・スカルスガルドが扮し、
大柄な体躯で威圧感を発散させるが、少し役不足にも見受けられる。
海原をのたうちまわる鯨のイメージが頭から離れない。
この景観、このクライマックス、この悔恨を、見届けて欲しい!
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