大橋美加のシネマフル・デイズ
1995年 日本映画 新藤兼人監督
ひとはどんなときに死を意識するのだろうか。
親しいひとの死によってだろうか。 ある日突然あらわれた、嘗ての自分によってだろうか。 死を意識し、ひとはどう向き合うのだろう。 死に魅入られるのか、意地でも撥ねつけるのか。
名女優・杉村春子を当て書きした主人公と、
農家の寡婦に化けた乙羽信子が繰り広げる、舞台劇ふうの芝居。
生きた台詞まわしに心が惹き寄せられてゆく。そう、人生は芝居。
ひとは何に裏切られ、何に救われるのか。
“幸せ”の意味は?
ロケーションの素晴らしさを活かし、
役者の力を活かし、”死“を拒絶した進藤兼人監督。 進藤映画のシュールレアリストの如き”画づくり“!
海面に黒子が掲げる棺が……ああ、たまらない!
生き続けることの意味を教えてくれる、
泣いて笑える異色の名作である。
Comments