大橋美加のシネマフル・デイズ
1982年 仏・西独 合作映画 ジャック・ルーフィオ監督
(La Passente du Sans Souci)
ロミー・シュナイダーの笑顔には哀しみが宿っている。
だから、ひとの心を打つのだろうか。
殊に43歳で亡くなった彼女の遺作である本作は、
波乱と悲哀に彩られた人生そのものが表情にあふれ、
涙を超えた感動をもたらす。
ミシェル・ピッコリ扮する初老の人権擁護組合会長マックスの妻リナと、
回想シーンの養母エルザの二役を演じきったロミー。
初めて本作を観たのは20代の頃で、ナチスの残虐さ、卑劣さに打ちのめされた。
人種間の争いはすべて、人間の最もみにくい本性を暴きだす。
尊厳を捨ててまで愛する人を助けようとする女を、これでもかと踏みにじる。
苦悩を押し隠し、きらめくドレスを纏うエルザに、
12歳のマックスがヴァイオリンを弾いて聴かせる愛らしいシーン。
利発そうなつぶらな瞳をもつ子役ウェンデリン・ウェルナーは
悲劇のなかに芽吹く若葉のような存在。
どんな役者に成長したのかと調べたところ、なんと数学者になっていた。
眼鏡をかけているが、確かに同じ顔!おまけに大人になっても童顔!
もう一度観たいと、ずっと想い続けていた本作のDVDは、
長年、美加の歌を聴きにきてくださる名古屋のS.N.氏が先月プレゼントしてくれた。
手持ちはVHSだけであったので、本当にほんとうに、嬉しい。
名画を心で共有できること、これ以上の関係があるかしら。感謝!
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