大橋美加のシネマフル・デイズ
1973年 アメリカ映画 ハル・アシュビー監督
(The Last Detail)
水兵姿の三人の男たちが、寒々しい風景の中を歩いていく。
どの場面も、とにかく寒々しい。
くぐもった白い空に、白い雪が舞い始める。
ジャック・ニコルソン扮する享楽的な海軍下士官バダスキー。
オーティス・ヤング扮する真面目だが流されやすい同僚マルホール。
ランディ・クエイド扮する大きな子どもみたいな新兵メドウズ。
凸凹三人組の、身震いしながらのロード・ムービー
基地の募金箱から40ドルを盗もうとした罪(未遂)により、
8年の刑を受けた18歳のメドウズを護送するバダスキーとマルホール。
ビールとハンバーガーに始まり、日蓮正宗の伝道所、娼館と珍道中は続く。
寒々しい公園でのバーベキューと相成り、かりそめの旅に終焉が訪れる・・・
グレン・ミラー楽団で知られる”American Patrol”や”錨を上げて”などの
マーチ・ナンバーが、のほほんと全編を覆う皮肉。
同情とも友情とも知れぬ”情”が寒気の中に消えてゆく。
虚しさだけが残るのが、”アメリカン・ニューシネマ”の魅力である。
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